夫と旅に出る。
3年前突然失踪し命を落とした夫と、夫の死後の軌跡を遡る旅に。
静かで安らかな二人っきりの旅。
会話の少ない二人だけれど、行間から穏やかな想いがひしひしと伝わる。
「忘れてしまえばいいのだ、一度死んだことも、いつか死ぬことも。何もかも忘れて、今日を今日一日のためだけに使いきる。そういう毎日を続けてゆくのだ、ふたりで」
生と死、本来相対する二つの領域の垣根を取り払ったかのように思えた二人。
ずっと二人でこの世をさ迷っていたかった。
けれど二人の間に静かに漂う淡い霧のような境界もいつかは晴れる。
「きみには生き運がある」
夫の発した寂しい言葉だけを後に残こして。
ずっと曖昧に描かれていた生と死の境目。
旅の終わりが近づくにつれ、くっきりと明確になってしまったことが、何より悲しくて辛い。
深津絵里さんと浅野忠信さん主演の映画もいつか観てみたい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
湯本香樹実
- 感想投稿日 : 2019年2月7日
- 読了日 : 2019年2月7日
- 本棚登録日 : 2018年10月19日
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