電球交換士…世界でただ一人に与えられた肩書き。読んで字のごとく、電球の交換だけを専門に引き受ける職業で、この一風変わった肩書きはいかにも吉田さんらしい。
電球を交換する際、いきなり強烈な電気ショックを食らっても平気だったことから、自分を不死身な男と自負する十文字の物語。
今宵も行きつけのバー〈ボヌール〉のカウンターに常連客が揃い、思い思いの飲み物を飲みながらとりとめのない話をする。
十文字に春ちゃん、マチルダ、ママ、西園寺。べったりじゃなくて程よく距離を置く。でも仲良し。
吉田ワールドはやっぱり穏やかな夜が似合う。
どこまてが嘘でどこからが本当か分からない、そんな話の間を行きつ戻りつ縫うような話が何故か心地よい。
私もみんなのお喋りに交じりたい。
そして十文字の作った卵サンドが食べたくなる。
不死身って一見羨ましいようで、実は厄介なもの。周りの知り合いがみんな居なくなっても、一人この世に居続けるのはやっぱり寂しい。
いつか終わりが来るから、今を楽しめる。限りある時間を精一杯に生きる大切さをしみじみ感じた物語だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
吉田篤弘
- 感想投稿日 : 2021年9月23日
- 読了日 : 2021年9月23日
- 本棚登録日 : 2021年9月18日
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