バレー部のキャプテン桐島が部活をやめた。5人の高校生の生活の中で、その話題は直接、間接的に触れられる。そのことで、生活が変わる者、ちょっとした変化に影響を与えられた者。それぞれの想いや変化の話。
5人の高校生それぞれの短編で、中で他の話のシーンが、別の角度で語られたりするのが、おもしろい。感情や想いが、ホント高校生らしく、自分にとっては、だいぶ昔のことでもあるので、懐かしく思えた。時代は違うが、高校生の頃って、こんなコンプレックスや思いを持っていたかもと思わせてくれる。
小泉風助、前田涼也の話が、親近感が持てた。桐島が辞めたことでレギュラーが回ってきた風助。自分に舞台が回ってきた時のこんなんじゃなかった感のとこが、部活で補欠で、一瞬回ってきた出番の時を思い出させた。風助はうまく切り替わっていくが、コートで活躍する高校生の描写や自分より上手い人への気持ちの描写が良かった。
前田涼也は、映画でも主体の部分だったが、だいぶ、さわやかだった。しかし高校生の中のカースト感は、ちょっと似たところのあった自分には、よくわかる感じで、それでも自分の好きな映画に夢中になる時に、輝いているところがよい。なんでもいい何か夢中になれるもの、得意とするものが、共有する仲間が力を与えてくれると思わせてくれる。カメラを通して見つめた先の描写もきれいに描かれていた。全体的に風景の切り取り方が、放課後の景色感に合わせて、この世代の心の動きにあった描写だと思う。
宮部実果の話は、設定が少し特殊な中に、何を持って人と比較するのかに疑問を持ち始めた気持ちの描かれ方がよかった。自分とは何?という想いを、その設定も生かして描かれていて、ちょっと切なくおもえた。
菊池宏樹の上のグループにいながら、自分をごまかしている感じからのイライラ感、沢島亜矢の好きになった時の没頭感と、本当に高校生の想いを感じさせてくれて、こんなんだったかなぁと思わせてくれるし、瑞々しい感じが良かった。
時に名前しか出てこない桐島を元にした気づきなど、何気ない生活のちょっとした変化からのそれぞれの想いが、描かれるのがよく、だいぶ昔の高校時代を思い出させてくれた。
- 感想投稿日 : 2020年3月6日
- 読了日 : 2020年3月2日
- 本棚登録日 : 2020年2月23日
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