下野北見藩の北見重興は、主君押し込みにあい隠居させられる。各務多紀は、とある事情から重興に仕えることになる。主君押し込みの背景にあるものとは。
上下巻2冊もテンポよく謎が解き明かされていき、どんどん読み進められた。
とある事情から、人が変わったような態度になる重興。話を聞き関係を深めていくことで、解決していこうとする五香院の人々の描写がよい。それぞれの心情が伝わってくる。
好きなのは、次のように会話の間などにサッと情景を入れるところだ。美しい情景描写が、緊張感や静粛さを表している。
「大殿は、我らが名君であらせられた」
城南の一番筋にある石野家の屋敷の奥、坪庭に面した一間。雪見障子には秋の陽がさしかけているが、物音ひとつしない。
言ってしまえば現代の問題を時代を変えて取り上げているのだが、時代小説としてのおもしろさの中で書き込まれていくのはどうやはりすごいと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年7月9日
- 読了日 : 2023年7月2日
- 本棚登録日 : 2023年7月8日
みんなの感想をみる