愛衣という1人の女性の物語。
各章でそれぞれ年代ごとに愛衣の物語が綴られていく。
①クレイジー・フォー・ラビット
愛衣小学6年生。ウサギが好きな愛衣は当番でもないのに同級生の珠紀と毎日のようにウサギ小屋に行っている。
愛衣はその人が放つ匂いで嘘をついていることを感じることができた。嘘を感じさせない珠妃と友だちになりたいと思っていた愛衣は珠妃の話に合わせてしまうが、その時に感じたのは自分から漂う嘘の匂いだった。
②テスト用紙のドッグイア
愛衣中学2年生。美術部に所属する愛衣は、時々嘘の匂いを放つ仲良しグループのメンバーよりも、絵が上手な吉乃と仲良くなりたかった。
③ブラックシープの手触り
愛衣高校3年生。思春期から両親との距離ができた愛衣は、たまたま出会ったエミと毎晩のようにファミレスに入り浸るようになる。そこでバイトしていた男性が同じ高校を退学した京介であることを知る。
④クラッシュ・オブ・ライノス
愛衣大学3年生。大手新聞社でバイトをする愛衣。バイト先の先輩が旅行先で津波の被害に遭ったことを知る。
⑤私のキトゥン
愛衣30代。結婚し、石川県で暮らす愛衣は専業主婦だ。一人娘の優里は夫にも愛衣にも似ず、負けず嫌いで活発な女の子。優里が通う保育園には発達が遅い明奈ちゃんという女の子がいる。
保育園の運動会。愛衣たちが見守る中、リレーで大活躍する優里。しかし、明奈ちゃんにバトンが渡ってから順位は落ちて結果、3組中3位に。大泣きする優里に愛衣がかけた言葉は。
どこにでもいるような目立たない1人の女性の物語なので、各章でドラマチックな展開が待ち受けているわけではないのだが、だからこそどの章も切なくて愛おしい。
読後感も良かった。ほんの少し心を前向きにさせてくれる物語。
- 感想投稿日 : 2022年2月19日
- 読了日 : 2022年2月19日
- 本棚登録日 : 2021年8月27日
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