五條・大塔村
太平記、南山踏雲録、天誅組、十津川郷士等に触れながら五條から十津川へ至ります。
天誅組に関する箇所は日本の近代史に疎いこともあり、読みこなすのが難しかったですが、これを機に少し勉強してみようとも思いました。
「ともかくも十津川村は、さまざまな歴史の通過地として華やかである。それにひきかえ、北隣りの十二村荘はなにごともなかった」と記される大塔村(十二村荘)について、「なにごともなかった」(p.81)と記しつつも、著者によって記されるその歴史はとても興味深いものでした。
十津川村
子供の頃、母の実家へ向かう折に十津川村を抜けたことがあり、川向こうの木々の中に点在する家々・学校を見て、子供心にここの生活はどのようなものだろうか、どのようにしてこの地に住まうことになったのかと、感じたことがありました。
「田中や那須という人間への関心ではなく、逃げ込むということへの関心である。日本は陸つづきの国境がないために他国へ亡命することができず、せいぜい天険をよじのぼって山家に入りこむしかなかった。古来、十津川がその適地として選ばれつづけ、…」(p.139)と述べる著者の言葉が、自分の十津川に対する望郷のような感情の一部を言い当ててるように思いました。
本章では十津川郷を中心として、十津川と関わった人たちが去来し、十津川の歴史が縦横無尽に語られています。
教科書的な大きな事象から、十津川に住む人たちの生活の一端も垣間見ることができます。
本書の最後、玉置山から十津川最南端の果無山脈を抜け七色に至ります。重厚な十津川をまさに今、駆け抜けてきたような気分に包まれました。
- 感想投稿日 : 2022年1月10日
- 読了日 : 2022年1月10日
- 本棚登録日 : 2022年1月3日
みんなの感想をみる