ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2007年2月24日発売)
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本棚登録 : 2602
感想 : 349
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新米教師河村と同年代の私は、この小説の本質を完全までではないものの、理解できるようになってしまった。この小説の舞台である田舎町の雰囲気は私の田舎町のそれとそっくりである。この閉鎖的空間での事件は致命的である。彼らと共に事件までの小中学校時代を過ごし、20年後に事件を振り返っているかのような錯覚に陥った。その20年で、子供時代から大人にかけての男女の違いというものを克明に抉り出している。また時間の流れが哀しくなるくらい具に描き出されている。これらの描写は嘆息が出るほどであるが、それ故に私を物寂しくさせた。もう庇護の下にない私は隼子のようにはならないが、身悶えするような苦しみを味わうくらいなら、堕落するような恋愛など知らなくてもいいと思ってしまうのは、私が幼いからなのか。10年後に読み返したら、きっと違う感想を抱くだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年1月13日
読了日 : 2015年12月10日
本棚登録日 : 2016年1月13日

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