夜の底は柔らかな幻(上) (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年11月10日発売)
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感想 : 9
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主人公は東京警視庁警部補の有本実邦(ありもとみくに)となり、警視庁から特命を受け、超能力を生かしながらある人物を追う女性捜査官である。
他に登場する一人一人にもスポットが当たり、集団で物語が進行する群像劇と云える。
舞台は日本国内に位置しながらも、治外法権を得ている特別な独立国家、「途鎖国」である。
この国の奥深い山中「フチ」に、ヨーロッパからもテロリストとして指名手配されている超能力者の神山倖秀(かみやまゆきひで)が、「ソク」として君臨している。
その「フチ」は山奥に広がる禁足の地で、水晶谷と呼ばれる神秘な場に、巨大な水晶内に「仏像」らしき謎の物体が存在すると伝えられている。
そこに王の如く君臨している神山と、彼に対峙する特殊な能力を備えた者たちが、激しいバトルを繰り返すことになる。
登場する多くの人物たちは、「途鎖国」への不法密入国者や不審な人たちで、そのような人物達を取り締まる入国管理局に、独裁者の如く君臨する局次長の葛城晃(かつらぎあきら)は、怪しいオーラを発揮しながら容赦のない特殊能力で彼らと対峙する。

読み進むに従って、一人一人の登場人物の繋がりが徐々に見えてくる。
そしてクライマックスには、恐怖を含みながらも壮大なスケールで超能力者達のバイオレンスなシーンが描かれる。
そして最後に、水晶体の中に存在する謎の「仏像」らしきものの意味が、漠然としながらも明かされる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恩田陸
感想投稿日 : 2023年4月29日
読了日 : 2023年4月29日
本棚登録日 : 2023年4月19日

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