世界文学の至宝に何度目かの挑戦。いつも地獄篇で息が切れるのだが笑。だいたい聖闘士星矢で見たまんま。
手元に<グリーン版>世界文学全集 第三集第三巻 ダンテ 神曲 河出書房新社/1966年刊があり、古本で入手して三十年来、読みきれずに持て余していた。この文庫版は上記の全集版を全面的に改訂し、三分冊にして2008年に発売されたものである。文庫版の大きな特徴として、ギュスターヴ・ドレの挿絵が多数収録されており、これが世界観を脳内で構成する上で大きな助けとなった。
生きたまま地獄めぐりをすることになる序盤の展開はよく知られていると思う。悪い奴らが地獄で阿鼻叫喚な目にあっているのは痛快なものだ。ただ、そこで見る人物たちに馴染みがないと感情移入もできないし、なかなか読み進めづらい。聖書からギリシャ神話あたりはまだなんとかなるものの、ダンテが生きた当時の政情にからむ、いわば関係者の話になると、「誰やねんそれ」で終わってしまう。訳注がかなり丁寧なので助けにはなるが、箇所によっては本文より訳注を読むほうがメインになってしまうほど、まぁ、読みづらいわけだ。このあたり、現代の我々が知っている人物や身近な知り合いなどになぞらえて、やつらを地獄に落としてみたらさぞや面白かろうと想像してしまう。やはり皆考えることは同じらしく、
P407 正宗白鳥「現在の大臣や代議士や陸軍大将や大学教授など知名の人物を、『神曲』の地獄中の罪人どものやうに取扱つた演劇が今日実演されたとしたらどうであらう」
というのが訳注にあった。まさにそれ。今世界中で憎しみを集めているあの人とかね……このダンテが描く地獄のどの階層に行くのやら、などと考えてしまう。
様々な苦しみを受ける亡者の姿と、それぞれがそこに落ちた理由など、映像的にも倫理的にもインパクトのある地獄篇。それは現代においても変わらぬ人間の業を見せつけて我々に深い思索を促す。と同時に、自分などには、この世界観に見られるファンタジー的な要素も大いに興味を引いた。ドップリとハマってしまうものがあるので、読みにくい部分もあるが楽しめた。煉獄篇にも期待。
- 感想投稿日 : 2022年3月10日
- 読了日 : 2022年3月10日
- 本棚登録日 : 2022年3月1日
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