19世紀ドイツの作家シュトルムが、青春や家族の心理を詩情豊かに描いた3篇を収録。切なさと愛しさと心強さと。
みずうみ、この作品は新海誠の『秒速5センチメートル』を彷彿とさせる。なぜ、連絡をとらなくなったのか、なぜ、こうなってしまったのか。長い時間における心理の描写がすっぽり抜けていて、こちらが想像するしかない部分が多く、唐突な結果にあぜんとする。それだけに切なさが強烈で、読後に独特の余韻を残す。この感じも、まだ尖っていた頃の新海誠作品に似ていて、自分はこちらの方が好みなんだよねぇ。
三色すみれ、この作品は継母を迎えた父娘の葛藤を描いた、現代でもドラマとかでよくみるパターン。衝突を繰り返しながらも、とある決定的な出来事で新しい家族の絆が紡がれていく。あふれる愛しさが半端なくて、自分も家族を大事にしたくなる。いないけど。
人形使いのポーレ、この作品は、とある旅芸人一座との出会いと別れが描かれる。ノスタルジーと青春と家族愛と、すべてがある集大成的な感じで、中篇程度の長さであるにもかかわらず、情緒ある光景と、繊細な心理描写も相まって、どっぷりと読み応えがあった。また、ところどころで意外な事件が起こるので飽きさせない。ラストは愛する人の心強さに感動する。本書で一番のお気に入り。
この作家の作品をもっともっと読みたいのだけど、そんなに数は残していないようなので、いずれ他訳にも挑戦してみたい。名作保証☆
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- 感想投稿日 : 2023年5月14日
- 読了日 : 2023年5月14日
- 本棚登録日 : 2023年5月14日
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