健全な肉体に狂気は宿る: 生きづらさの正体 (角川oneテーマ21 A 41)

  • KADOKAWA (2005年8月1日発売)
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だいたいおんなじいつものあの話。
まーでも飽きない。

賢いリスクヘッジをしたと思っている人は、
無意識的にリスクの多い選択をしてしまうという例えに、
中古車の話をしている。

「ぶつけても大丈夫なように中古車を買ったら必ずぶつける、
だってそうしないと中古車を買った意味がないんだもの。」
これ至言。

また、
人間が「個人」になるプロセスの話が面白い。

これはラカンの鏡像段階とか、
先ごろ読んだ「ミラーニューロン」にも近いものがあって、
産まれた時、
人は世界全体と溶け合っていて、
自分とそれ以外という分節をしていない状態にある。

だから、
「個人」としての「自分」がまずあるのではなく、
「全体」としての「自分」が先立ってあるのである。

それを家族という共同体に置き換えると、
「私」という個人がまずあるのではなく、
「○○家の次男(例えばです)」という役割がまずあって、
そこから徐々に「自己」を立ち上げていくというプロセスを経ているのである。

釈迦牟尼の「縁起」と「空」という考えも、
こういった自己生成過程に沿った考えのような気がするなぁ。

また、
核家族の閉塞性という話も興味深かった。

「父」「母」「子」の三項だと、
関係性や価値観が膠着してしてよくないから、
「おじさん」乃至は「おばさん」(子と対になる性)を入れて、
四項にしておくと開放性が保たれて上手くいくらしい。
これは、あきらかにレヴィ・ストロースだった。

わたしもよいおじさんとしての地位をなんとか気付きたいものです。

それにしても内田先生は相変わらずおしゃべりな「男おばさん」である(褒めてます)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 内田樹
感想投稿日 : 2012年2月17日
読了日 : 2012年2月16日
本棚登録日 : 2012年2月16日

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