REAL 11 (ヤングジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社 (2011年11月11日発売)
4.40
  • (241)
  • (162)
  • (51)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 1557
感想 : 161
5

11巻は野宮が主人公。
物語を経るにつれ徐々に作者に似てきた彼は、
この巻ではもはや井上雄彦その人である。

だから、
描き手の感情移入の度合いがものすごいことになっている。
思わず身震いしてしまうくらいに。

リアルは、
三人の主人公が、
それぞれの障害を乗り越える話だと思うのだけれど、
戸川は当然体の障害を、
高橋は傲慢な心の障害を乗り越える。
では野宮はどうだろう?

ぼくは最初「社会のルール」かなーと思った。
でも、この巻を読んでいて考えを改めた。

それは「運」だ。
「ツイてない」という障害をどう乗り越えていくか、
それが野宮の話である。

そして、
神のいたずらとも言える不運を乗り越えるには、
その不運をも楽しめる柔和な心が必要なのだ。

だから、
野宮は苦境にこそ幸せを見出す。

たぶんそれが「普通に生きる人間」にとっては、
一番大切な心の資質なのである。

そう、
野宮は作者自身であるが、
同時に読者自身でもあったのだ。

であればこそ、
野宮の姿に自分を投射し、
心震わせて涙するのである。



さて、
ひとつ想ったことを。

この巻の途中、
野宮が絶望を想う時、交通事故を思い出す場面がある。

でも、
交通事故を2度経験した身からすると、
あんな大きな事故だったら気絶するんじゃなかろうか、と想像する。
(ぼくは1度目は救急車で、2度目は病院で目覚めた)

つまり、
絶望の淵底ってのは、
それが絶望だとすら認識できないことなのではないか。

絶望には決して至れないことが絶望である、
という何だか少しくレトリカルな言い回しだけれど、
そんな風な感想を抱いた。

本書の意見とはちがうけれどね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2011年11月23日
読了日 : 2011年11月23日
本棚登録日 : 2011年11月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする