綿矢りさの芥川賞受賞後第一作です。夕子の誕生から、十八年間を描いた長編小説は、前二作と異なり主人公を外側から描いていますが、母親を含めて女性が男性に向ける感情を描いた心理描写に感激したのは前二作と変わりません。
特に本作の後半で失恋に気付く夕子の感慨が圧巻です。例えば、その感慨に気付いても巧妙に拘束を続けて一生を全うする事も出来るし、そこで諦めても、一般人ならばただの失恋です。芸能人であることと、母親の父親に対する激情を感じ続けてきた夕子の特殊性が、彼女の失恋を大事にしているように感じました。
人の幸せ、不幸せはそれぞれであり、必ずしも夕子が不幸せだとは思わないけれども、波瀾万丈の大波の中で十八年を生きた夕子の今後も、たくましく生きてほしい。と、思ったのが、僕の読後の感想です。
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- 感想投稿日 : 2015年11月21日
- 読了日 : 2015年5月15日
- 本棚登録日 : 2015年5月15日
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