ダメ男はダメだからこそ、女子を惹きつける
ということが自然にアーティスティックな又吉さんだからこそ描ける。
主人公たちの出会いと付き合うことになる経緯など、ほぼ幻想文学のようなファンタジー感、何か結界を超えたところで起こった出来事のような。
そんなフィクション感が満載な中、現実はパラレルワールドのように流れているわけで、常にダメ男の主観の奥には見たくないリアルな現実が通底音のように流れている。
又吉さんは当然そういうシビアな現実の中戦ってきているわけだからリアルな社会もよく理解した上での構成をしているのだと思う。
主人公たちカップルにとって、演劇という、フィクションそれは東京ともニアリーイコールで、何かを信じ、共有しそこに居場所を確保するのだけど、妄信的に信じる主人公とは別に離れざるを得ない恋人の生命力の切れたような部分にせつなさが感じられる。
別れる最後まで演劇になってしまう、主人公の痛さが、それだからこそ切実に純粋なものとして放り出される。
ただ、純粋なだけでは、不器用で、ある意味外から見た客観的な視点が芸術表現にも必要だということが暗に示されているような。そんな重層的な作品だとも感じた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年4月6日
- 読了日 : 2024年4月6日
- 本棚登録日 : 2024年4月6日
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