ブロックチェーン革命: 分散自立型社会の出現

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  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2017年1月1日発売)
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ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現 単行本 – 2017/1/19

日本は否応なくこのパブリックブロックチェーン技術を最大限活用する以外に選択肢はない
2017年7月31日記述

野口悠紀雄氏による著作。
2017年1月18日 1版1刷。

野口氏は2014年に仮想通貨革命という書籍を記している。
その時にも解説はあったのだが、そのしくみの中にある
ブロックチェーンという技術がコアなのだ。
それは単に仮想通貨だけではなく広い分野に革命を起こす。
具体的には、土地登記をはじめとする公的な登記や登録への活用。
いくつかの国ですでに実施されたり実験が行われている。
宝石、貴金属、ブランド品などの購入履歴のトラッキングにも応用が可能。

ブロックチェーンはIT革命の時のような非連続のイノベーションをたくさん起こす可能性がある。
(インターネットの場合には、通信網が整備されるのに時間がかかった。ブロックチェーンは、すでに出来上がっているインターネットのネットワークを使えるので、普及のスピードはインターネットの場合より
早い可能性がある)

特に事務のルーチンワークを無人化出来る可能性が今以上になる。
外国ではAIやこのブロックチェーンの人の仕事を奪う危険性について議論される事もあるようだ。
しかし我が国日本は野口氏の著書2040年問題にも書かれているように深刻な人手不足が続く。
結論から言えば日本は否応なくこのブロックチェーン技術を最大限活用する以外に選択肢はない。
移民について未だに拒絶しているのだから当然、その他の手段で人手不足を解決しなければならない。
それは製造業の製造部門、工場のアジア移転、そして事務部門へはこのブロックチェーン利用によるものだ。

従来のITを使うのであれば、ルーチンワークを行う人手はどうしても必要だ。
しかしブロックチェーン技術は、基本的には人手なしで運営できる仕組みだ。
したがって人員の大幅な削減が可能になる。
究極的には、銀行や証券会社そのものが必要なくなるかもしれない。

ブロックチェーンは組織に頼らずに何が正しいかを立証することを可能とした。
それが実現することにより、社会が大きく変わる。
→インターネット登場時に期待された社会のフラット化はブロックチェーンによって実現される。

ただしプライベートブロックチェーンという中央の管理者のいる仕組みも近年登場しつつある。
日本でいうと三菱東京UFJ銀行が発表したMUFGコイン。
この場合、大組織が社会を支配する構造が続く。

もし中央銀行が仮想通貨を発行する場合は「1984年」にある悪夢のような世界が実現することになる。

パブリックブロックチェーン
→誰でもP2Pに参加することができる。
信頼できない参加者が入ってくる可能性がある為、
不正がなされる可能性がある。
それを防止する為にPOW(プルーフオブワーク)という計算作業を課しデータの改ざんが事実上できないようにしてある。
管理者がいないこと、改ざんが不可能なことが重要な特性だ。
問題点はPoWの関係で取引の確認に10分程度時間がかかること。

プライベートブロックチェーンはPoWを課していない為に取引記録確認がパブリックよりも速く行われる。
ただし管理者が存在し管理者に対する信頼によって成立していること。
自由主義的でオープンな仕組みとは異なる。
開放的なシステムでは、さまざまな人や組織が関与するので技術革新が起こりやすい。
それに対して閉鎖的なシステムでは一旦採用したシステムがそのまま続きやすい。
長期的にはパブリックブロックチェーンが優越する可能性が高い。

プライベートブロックチェーンはファウスト博士の契約だ(タプスコット「ブロックチェーンレボリューション」)

中央銀行が仮想通貨を発行するとマイナス金利政策や
経済をコントロールすることが極めて容易になる。
また全国民の詳細なプライバシー情報を手にする事によって捜査当局や徴税当局の仕事がやりやすくなる可能性がある。
ただしジョージ・オーウェルの描いた1984年のような世界が出現する。
ビックブラザーは全能の独裁者であり、その権限の源は全国民の生活を仔細に観察できることだ。
我々はこうした状況が生じることを、何としても食い止めなければならない。

ただ野口氏の懸念とは逆に日本の当局がそこまで大それたまさに革命のような中央銀行による仮想通貨発行を行う姿がイメージできないことだ。
企業の間でもベンチャーも少なければユニコーン企業のような有望な若い企業が出てこない。
そのような人材も少ない国でそんな野心的な戦略を実行する人間がいるだろうか。(ある意味でそれはそれで問題なのかもしれない)

何より人手不足の未来の日本社会ではなるだけ手間のかからないものを選んでいくべきだろう。
それはパブリックブロックチェーンに他ならない。
また日本の国と地方の借金は1000兆円を越え、全くまともに財政再建が進まない日本国において資本逃避する先として米ドル以外に仮想通貨があってしかるべきであろう。
国内で使える場所がもっと増えた方が日本の
財政破綻が起きた場合に便利であろう。

第10章で労働者はいるけれども、経営者がいないDAOについての説明があった。
この辺はTVでも取り上げられることが無い為か少々具体的にはイメージしにくかった。
ただ無能な経営者に仕えるくらいならDAOで働く方が良いだろうとは思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月4日
読了日 : 2021年12月6日
本棚登録日 : 2021年12月6日

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