人の砂漠 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1980年12月29日発売)
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感想 : 73
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社会の片隅の片隅に生きる人々の姿を伝えるルポであった。ミイラと同居し汚物まみれで孤独死した老婆、元娼婦たちの保護施設、日本列島の最南端と北端、資源ゴミをお金に変えて生活する人々、先物取引に見る栄光と挫折、天皇不敬罪で公安警察に追われる人たちの人間模様、憎めない老婆詐欺師とその被害者たち。興味深くて面白くてしんどくて、しんどいけれども多様であり人間味もあり、社会というものは様々な人々を抱えつつ全体として生きているのだなと思った。まだ24歳の生き生きした沢木耕太郎氏の目に映る風景を通して、みんなが色々なところで生きている実感のようなものが伝わって来くる。マスメディアばかり見ていると中央集権的な視点で周縁を切り捨てがちだが、切り捨てた部分からの視点で見渡すとより鮮明に見えてくるものがある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年10月19日
読了日 : 2023年10月18日
本棚登録日 : 2023年10月7日

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