光あるうちに―道ありき第三部 信仰入門編 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1982年3月1日発売)
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感想 : 44
5

作品が話題にされたことが繰り返された中で触れた三浦綾子作品が面白かったことから、「同じ作者の別作品」と色々と読み進める中で出くわした作品ということになる。興味深く拝読した一冊である。
「道ありき」という題名を冠した、「自伝」とも言われる作品が3冊在る。既に最初の1冊、次の1冊は読了し、それを踏まえて本作、3冊目を手にして紐解いたのだ。
「道ありき」という題名の下の、過去の2冊は作者の「自伝」であることは間違いないのだが、もっと純粋に「小説」という気分で愉しく読んだ作品であった。作者の「自伝」ではあるが、寧ろ「発表した小説が好評を博し、小説家として名を成した感の女性が、自身の来し方を振り返りながら綴った」という「物語」というように感じられた。
これに対して、「第三部」と銘打つ本作は、過去の2冊と趣が少し異なると思った。
本書は純然たるエッセイ集である。雰囲気としては講演の内容、または何処かで三浦綾子を囲んで何人かが集まって聴いた話しを文字に起こした内容というように感じられる。「第一部」や「第二部」に在った、物語風に来し方を振り返るということでもなく、「思うところを語る中に、過去に綴って世に送り出した、来し方を振り返る内容が少し入る」というように理解しておくと善いかもしれない。
純然たるエッセイ集というように思いながらも、紡がれる言葉の背後に「第一部」や「第二部」に在った“物語”を意識するという面も大きい。
『氷点』で注目され、数々の作品を送り出し続けたという中で本作が「雑誌連載」ということで登場した。結局、「道ありき」の「第一部」や「第二部」に在った様々な出会いと、その背後に在った思索の経過を、改めて人々に問い掛ける内容を纏めた、雑誌連載エッセイとして整理したというのが本作ということになるのであろう。
本作にも言及が在るのだが、「第一部」の殊に前半部の主要な内容となる、何か「棄てた」かのような人生を、幾つかの出会いで取り戻して行くような感、それも病を得ての生活という中でそうした出会いを経験しているということが、三浦綾子が「伝えたいことを綴る人=作家」になって行った出発点に在るのだと思う。数々の挿話を通じて、様々な角度からそうしたことが語られるというのが本作であるというようにも思う。
本作に触れると、それが何と呼ばれているモノであろうと、個人にとっての“光”というようなモノを見出し、それを追い続けながら色々と思索するというのが大切であるということに思い至る。
最近は、何やら「詰まった…」という様子の人も巷には多いような感である。そいう時代であるからこそ、本書は広く読まれるべき内容を含んでいるのかもしれない。そんなことを想った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 三浦綾子 作品
感想投稿日 : 2023年12月15日
読了日 : 2023年12月15日
本棚登録日 : 2023年12月15日

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