丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年6月26日発売)
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感想 : 945
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王も麒麟も出てこない、これは民の物語なんだと読み終わってからため息をついた。

一番好きな話は青条の蘭だな。最初に出てきた男が標仲だと思っていたらそうではなかった、というのが最後になってやっとわかる。(気づく人は途中で気づくんだろうけど)
どこの国の話なんだろうと思いながら読み進め、冬の厳しさがこれでもかと描写されてるから北のどこか…?柳か?と思ったけど柳の話はその前の落照の獄で登場してたよな…と思いながら読むのは、思い返してみるととても楽しかった。
こういう専門職だからこそわかる危機を一般人や上司が理解しないという構図は現代でもあるよね…と心が痛んだ。
体が限界を迎えて涙も出てもう動けない標仲の必死さと悲痛さが周りを動かして先へ進んでいくという、貧しい国のはずなのに人の心も必ずしも貧しくなるというわけではない温かさがある。
玄英宮という言葉が出てきて雁か!とやっと合点がいった。尚隆が王になったばかりの時の国の荒れ方は確かに…それと同時に尚隆ならば青条を受け取るだろうという確信が芽生えるから、本当に延王すごいな…
この話で好きなのは締めくくりだな。
人も里木も雪の中で枯れようとしている中で、希望とも言える果実が実る瞬間は興慶のように目の当たりにしてしまったら泣いてしまうだろうな…

荒れた国の再興への希望がある一方で、栄えた国なのに瓦解して行く予感が恐らく現実になる恐怖が見える。民の視点で国を見ると当たり前だけど、違うものがよく見えてくるのがおもしろかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年9月20日
読了日 : 2022年9月20日
本棚登録日 : 2022年9月20日

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