くされ重いハードカバーを持ち歩いて1ヶ月半、よーやく読み終わったこの小説。
ラブストーリー?ファンタジー?ジャンル分けは難しいし、敢えて分類する必要性も感じないくらい、流動的で、単純で、壮大なストーリーだったと思う。
めずらしく、物語の後半もグチャグチャっとならず、スっと完結していた。
主人公も所謂いつもの「ぼく」ではなく、それは紛れも無く、「天吾」であり、「青豆」だった。
綾波レイを彷彿とさせるフカエリも、個性的、蠱惑的であり好感が持てた。
また、用心棒のタマルが今までの村上作品の登場人物を集約させたようなキャラクターに思え、頼もしく思えた。
物語の後半に登場する、あの人もちょい役かと思いきや、グイグイストーリーに食い込んできて、1Q84のある種、不気味な世界観をより強固なものにするために一役買っているような気もする。
ただ、やっぱり村上春樹は村上春樹だよね。勿論良い意味で。
酒はジントニックだし、凝った料理はパパッと作るし、主人公は好むと好まざるとに関わらずモテるし。
だた、文学作家がこんなファンタジスティックな作品を書くと、なんだか本当にジャンルってどーでもよくなってくる。と同時に、もう誰も月が2つある小説は書けなくなるような気がする。
そして何よりも特筆すべきは、更に鋭さを増した例え話のオンパレードよね。
ベーシストがレッチリのフリーの演奏を生で聴いて、オレ、ベース辞めようって思うように、
伊集院が立川談志の落語を聞いて、落語家の道を諦めたように、
もしオレが小説家でこの本読んだら、その例え話の引き出しの多さ、上手さに、シュンってなっちゃいます。
- 感想投稿日 : 2011年10月4日
- 読了日 : 2011年5月25日
- 本棚登録日 : 2011年10月4日
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