昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

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  • 中央公論新社 (2010年6月25日発売)
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各省庁、軍、民間のベストアンドブライテストを結集した総力戦研究所では、開戦前の段階で日米戦は敗北に終わるとの結論が導かれていた。
日米戦の敗北を予想した総力戦研究所における机上演習と、現実に開戦に至る経緯を並行的に描くことで、なぜ日本は合理的な決断ができなかったのかを導き出す。
かたやしがらみなくファクトに基づき意見を戦わせられた総力戦研究所の机上演習に対し、現実の政治には、開戦へと向かわせる時代の勢い、空気、軍部によるテロなどが付き纏い、そうした外部環境に対して受け身の意思決定をとった。さらには、総力戦研究所の模擬内閣メンバーも現実世界ではなんら終戦を早めるための動きもしなかったことに現れるように、誰もが、東條でさえも、自分を決断の主体として歴史の中に位置付けることなく、その場その時に自分の与えられた役割を忠実に果たすだけの(悪い意味での)官僚に成り下がっていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年5月23日
読了日 : 2020年5月18日
本棚登録日 : 2020年5月18日

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