100年前、たった1冊の神謡集を世に送り出し、短い時間を駆け抜けて行った知里幸恵。
金田一京助との出会いは、アイヌに伝わる神謡の口語訳に火を当てる事。しかし、129日の東京での時間が彼女の生を縮めたのか、今となってはそれが幸いだったかどうかは語れない。
しかし、言えるのは「アイヌから大地を奪ったシャモ」がちゃんと向き合わねばならぬ心情そのもの。
石村氏の文は平明であり、とても読み易い。「100分de名著」で触れなければ幸恵の人生にも触れることなかった。番組では幸恵の姪の長女の朗読で神謡が朗読される。幸恵の生の声は残っていなくても、100年を経た時間が再現されるような 心に響くその調子。
129日間の東京での生活は文学とエロスが濃縮されたような時間だったらしい、京助の妻、春彦への気遣いは大変だったであろう。そして終生続いた和人の苛め、失ようんそれがどれほど身を削って行ったか思うと胸が痛む。
朗読の木島さんが読む「・・トワトワト」の響きはオノマトペだが、それ以外にも意味不明の擬態音が多い。
そして語られるシマフクロウと貧しい少年との出会いにも謎が。しかし考えられるのは幸恵が敬虔なクリスチャンであったこと~通奏低音の温かな慈愛の気持ち。
アイヌといえばウポポイ言えば。昨年増毛の帰りに寄りたかったのだが,休館日の月曜で実に残念だった。一度は訪れたい。
2015年にやっと始まった神謡集の口語訳の動き、幸恵のノートがまだまだ手を付けられていないという。引き続きの紹介が待たれる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ドキュメンタリー
- 感想投稿日 : 2022年9月24日
- 読了日 : 2022年9月24日
- 本棚登録日 : 2022年9月24日
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