花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1968年9月17日発売)
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本棚登録 : 2599
感想 : 235
4

表題作のひとつ、「花ざかりの森」からして、どの話もその文体の独特の、それでいて読みやすい美しさに惚れ惚れした。

花ざかりの森は私の読解力不足でなかなか理解が難しかったが、なぜか読み進められさせた。後々読み返したら、きっとその良さがさらに分かるだろうなと期待して。
「卵」のナンセンスさと奇妙さと、落語のようなおかしさがすごく好き。多分本短編集の中で一二を争うくらい好きだ。
卵と並んで好きで、その憂いと儚さと耽美さを、それ以外にも一口で表現しきれない何某かを孕んだ「海と夕焼」「憂国」も良かった。
どちらもまた違う魅力があった。
「月」はタイトルを月と書いてmoonと読みたいような物語だった。
「橋づくし」には引き込まれた。この物語はどのような結末を迎えるのだろうとドキドキさせられた。
「女方」の万菊の艶やかさといったら。それを見る主人公視点の語り口といったら。
巻末の解説も作者によるもので、読み応えがある。
花ざかりの森は渋々載せたという文言にクスリときた。
浅い感想になってしまったが、読み深めていきたいと思わされる短編集だった。

以下備忘録がてら目次をば。

花ざかりの森
中世に於ける一殺人常習犯の遺せる哲学的日記の抜萃
遠乗会

詩を書く少年
海と夕焼
新聞紙
牡丹
橋づくし
女方
百万円煎餅
憂国

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学/小説
感想投稿日 : 2023年5月11日
読了日 : 2023年5月11日
本棚登録日 : 2023年5月11日

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