宝石を文字にしたら、きっとこの人の各文章になるのだろう。そんなことを考えるような読後感だったと思います。
切々とした口調で続けられる、身勝手さをぶつけ合う主人公たち。
復讐を望むシュガーリアは、怒りを語っているはずなのに、語るたびに精錬されて軽く、ひどく美しくなっていく。
最初に登場したとき、やんだように凍えて冷え切ったヨクサルの心には、その熱が映ったかのようにかすかに熱を帯びようとしていく。
大切な人が踏みにじられて、一人ぼっちになった女の子の透き通るような怒り、静かな熱。
当たり前に穏やかな日々と、それを踏みにじられきった悲しい街の姿。
世界観だけしかない、といえばそうで。
世界観だけで十分だと言えるほどの密がある、というか。
うまく言葉を紡げませんが、シュガーリアが最後の最後に吐き出した、自分という存在の滑稽さと、滑稽さの中で貫いた熱情があまりにも切なくて真っ直ぐで、どうしてこの子はこんなに美しいのだろうと思いながら、ただひたすらに、この美しい子を踏みにじるすべてを殺してやりたいと真っ白な殺意になれた瞬間が、とても好きで。何度も読み返してしまいたいなと思う、そんな作品に出会えたことを、心から嬉しく思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
娯楽
- 感想投稿日 : 2020年4月19日
- 読了日 : 2020年4月19日
- 本棚登録日 : 2020年4月19日
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