砂の器(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1973年4月3日発売)
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本棚登録 : 3768
感想 : 296
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全国を飛び回り、断片的な手掛かりを1つの真実に結び付けていく刑事の根気強さには脱帽した。
途中、犯人の手掛かりを探しに、北陸の山村を訪ねる場面がある。私も幼少期に近くまで行ったことがあるが、山中温泉からさらに奥地であり、今はダムの底に沈んでいる場所だと思う。今回の悲劇が始まった山里の風景を思い浮かべた。
真実が明らかになり、結末を迎えるわけだが、読後には感動というよりも、空虚感が漂った。是非ともこの本を読んだ人、映画を見た方と会って議論したい気持ちになった。
恥ずかしながら、ハンセン病に関する知識が乏しく、改めてこの病気に関する差別の歴史と研究を学んでみたい。皮膚に異形の症状が現れるので、患者さんを初めて見た人は驚くのだろう。科学的根拠の無い差別が生じ、本人と関係者は本当に辛いことである。当然、時代とともに医療が進歩しているが、時代に関係なく差別をしてしまう「人間の業」を如実に描き、社会的問題を提起した名作だと思う。
ジブリの「もののけ姫」でも、「たたら場」で働くハンセン病患者の描写があり、そして舞台は奥出雲地域と思われる。地域の一致は偶然なのだが、連想してしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年12月19日
読了日 : 2021年12月15日
本棚登録日 : 2021年12月15日

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