四日間の奇蹟 (宝島社文庫 347)

著者 :
  • 宝島社 (2004年1月1日発売)
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感想 : 817
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ミステリー大賞とのことで、推理モノかと思ったが、壮大なファンタジーであり、音楽・脳化学・宗教と、色んな観点から真面目に考えさせられる長編だった。

ベートーベンの月光ソナタは好きな曲なので、読んでいる途中からずっと頭の中を流れている。最後、礼拝堂で弾いている場面は鳥肌が立った。

キリストの描写があったが、真理子は「聖人」だなと思った。子どもが出来ない身体だけれども、沢山の人が彼女によって救われ、寿命を永らえている。例えば千織ちゃんの成長とか、和枝夫人の回復とか、未来さんの結婚(たぶん子供は出来るだろう)とか、これらは真理子によって残された命である、本人は自分が存在した意義を最後に実感し、納得して旅立ったのだろう。彼女に助けられた人たちも、彼女のことをずっと語り継いでいくわけである。

子孫を残すことが使命である動物とは異なり、血の繋がっていない他人に自己犠牲の愛情を示し、影響を与え、何かを受け継いでいくという、人間らしさを感じさせる生きざまだった。

心に残ったセリフとしては、倉野医師の放った一言である。
「信じるということは、人間の脳に与えられた偉大な力」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月16日
読了日 : 2022年6月14日
本棚登録日 : 2022年6月12日

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