パチンコ 下

  • 文藝春秋 (2020年7月30日発売)
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タイトルの『パチンコ』
いろんなものを象徴しているように感じた

文中にこんな一節がある
「人生はパチンコに似ている。ハンドルを調節することはできても、自分ではコントロールできない不確定な要素があり、そのことも心得ておかなくてはならない。
何もかもあらかじめ定められているように見えて、その実、運任せの要素や期待が入り込む余地が残されている」

コリアンであることをひたすら隠し、日本人になりたいと願い、日本人の中に紛れ込もうとしたノアが最終的に選んだ仕事、選ばざるを得なかった仕事?がパチンコ業

懸命に働くことによって、金を儲け一人前の男として認められ、尊重されることを願ったモーザスが自ら選んだのがパチンコ業

モーザスの一人息子ソロモンは、コロンビア大学を卒業し、イギリスの銀行に就職しながらも、結局利用され、解雇されて父のパチンコ業を継ぐことを決意

しかし、初めは、ヤクザと結びついたそれしか職業選択がなかったマイナスイメージのパチンコではあったろうが、世代が移り変わっていくにつれ、日本に根を下ろし、懸命に生き抜こうとしているコリアンの魂の象徴が、『パチンコ』であると思いたい

北朝鮮にも韓国にも愛着を抱けない。コリアンであることは貧困や恥ずべき家族のように振り解くことのできない足かせのようなものと感じ、ひたすら渡米を願った裕美

韓国に行けば日本人として扱われ、日本からは、滞在者として扱われる祖国を持たない宙ぶらりんの扱い

『日本は、こちらがいくら愛しても自分を愛してくれない継母に似ていた』という一節が、最後まで胸に突き刺さっていた

日本で生まれ何年も暮らしているのに、いつまで経っても在日コリアンという呼び名
いろいろ考えさせられた







読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月26日
読了日 : 2023年9月5日
本棚登録日 : 2023年8月29日

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