蒙古の波 (白狐魔記 2)

著者 :
  • 偕成社 (1998年6月1日発売)
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本棚登録 : 398
感想 : 37
4

白狐魔記(しらこまき)、第二巻。

修行により人に化けることができるようになった狐の白狐魔丸(しらこままる)は、源平の戦いの後、長い眠りから覚めると、時は鎌倉時代になっていた。
北条時宗が執権となり、今にも元の大軍が押し寄せようとしている…。

『白狐魔記』は一巻ごとの読み切りなので単冊で読めると聞いていたが、いざ『蒙古の波』を手にとって見ると、一巻である『源平の風』のあれやこれやが出てくるので、どう考えても巻順に読む方がいい。話は一巻ごとの読み切りではあるが、全く繋がっていないわけではないので、先に後の巻を読んでしまうと盛大なネタバレになってしまう。というわけで、白狐魔丸が事あるごとに佐藤忠信のことを思い返している様にしんみりした。八十五年の月日が経っていても、眠っていた白孤魔丸にしてみれば、ほんの数ヶ月前の出来事なのだ。
『源平の風』では、白狐魔丸が妖狐となるまでに前半の多くが割かれていたので、それで義経らとの邂逅部分が少なかったのかと思ったのだが、白狐魔丸がただの狐でなくなってしまった二巻あっても、彼が人間とガッツリ苦楽を共にするというお話ではないようだ。狐の目から見た人間の来し方を、掻い摘みながら、時に他人事のように、時に感情移入しながら見ていく様は面白い。
白狐魔丸が度々人間の考えや行動に疑問を持ったり、「武士など嫌いだ」と思ったりする姿に共感が持てる。
歴史の当事者としての視点ではないという部分は面白くもあり、描きにくくもあるだろう。白狐魔丸が竹崎季長の戦場での様子を見るために、行ったり来たりして先回りする様は、作者も苦労したのでは?などと想像すると面白い。

以下、多少ネタバレです。
今回は、市谷小平太との出会い、ブルテ・チョノとの出会い、竹崎季長との出会いと話が分散している印象も受けた。元寇の描写は、さほど描かれていないにしてもむごく、実際の元の領土拡大がそのような酷いものだったことを考えても、義経像と照らし合せることには違和感があるが、途中で解き明かされる物語の「繋がっている」感は気持ちが良い。この物語を手に取った時、「数ある歴史的出来事の中で、なんで元寇?」と思ったが、「だからか!」と謎が解けた気になった。
ブルテ・チョノは結局なんだったのか?
竹崎季長は、日本史で名前を覚えただけの存在だったが、この物語では始終エネルギッシュでどこかファニーな人材であった。
雅姫の物語は、この後どうなったかも含めて、スピンオフとして読んでみたいものだ。

『蒙古の波』は物語としては一巻に比べると少し散逸な印象を受けたが、この物語で描かれたことも、もしかしたら三巻以降に繋がっているのかもしれないと思うととてもワクワクする。仙人についても、今後もっと描かれるだろうか?
続刊に期待。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小学校高学年
感想投稿日 : 2020年4月8日
読了日 : 2020年4月8日
本棚登録日 : 2020年4月8日

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