「産めよ増えよ地に満ちよ。」
全ての生物は個人の意思とは無関係にそうプログラムされているが、現代社会のほとんどの文化で性表現は隠され、多産に限界がある一夫一妻が奨励されている。
この状況は、種が繁栄するための最適な選択の結果なのか。はたまた社会の発展は、ヒトに種の目的以外の選択肢を持たせるに至ったのか。
本書はヒトの男女の性戦略の違いを他の生物と比較することで、その進化の道筋を探求する。
進化がどこか意味ある到達点を目指すものではなく、環境に適した形質のみが保存されるように、本書も何か意味ある結論にたどり着くものではなく、ただただその道程を語ることにのみ紙面は費やされる。
出産に多大なコストを強いられる女性と排卵時期を隠蔽される男性の性戦略の違い。
妊娠期間にない女性のみならず、男性にさえ残る授乳機関の実例。
育成コストの集中化のために誕生した閉経のメカニズム。
祖先のサイズから四倍に拡大した男性性器の謎。
どの話題も興味深く楽しめることは間違いないが、それらが新しい発見に結びつくことはなく、論がまとめて総括されることもない。
だからといって本書に意味がないというわけではない。ここから得た知識を酒の肴で終わらせるか、次の何かに繋げるかは、読者次第だろう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年9月4日
- 読了日 : 2016年9月4日
- 本棚登録日 : 2016年9月4日
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