悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

著者 :
制作 : ピエール・ルメートル 
  • 文藝春秋 (2015年10月9日発売)
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本棚登録 : 3593
感想 : 453
4

初っ端からこれでもかという凄まじい描写に、なぜこんな本を読み始めてしまったのだろうと一瞬後悔した。わたしは時々ランチを食べながら本を読むのだが、この本は間違いなく、そんな風に読むのには適していない。


郊外のロフトで2人の女性の惨殺死体が発見された。
カミーユ・ヴェルーヴェン警部が部下たちと共に現場に到着したとき、一番最初に目に入ったのは、壁に掛けられた女性の首だった。
犯行現場となった部屋のインテリアや、そこに残されたものを調べていくうちに、カミーユはだんだんとそれらに強い違和感を頂くようになる。
現場の壁にクッキリと残されたある印から、これが連続殺人事件だという見方が濃厚となった。そして過去の事件の資料を読むと、それはやはり残酷な手口であり、且つ何か違和感や矛盾を感じさせるものだった。

キーポイントは『なぜ、そうでなくてはならないのか』ということ。
それは意外と早い段階で明らかになる。しかし犯人はまだ分からない。
そして犯人が分かってからも、わたしたち読者は更に騙され続けていることに気がつかないでいる。
もう、本当にびっくりしました。

あともうひとつ、この物語の主人公であるカミーユは身長が145cmしかない。そのことが、読んでいる間中ずっと付きまとう。この設定はすごいなと舌を巻いた。この物語を読むときは常にそのことを意識せざるを得ず、そしてなんだか落ち着かない気持ちになってしまう。まるで1本だけ足がわずかに短い椅子に、無理やり座らされているかのような感覚に近い。


ありえないくらい残酷な事件を描いた小説は、世の中にたくさんあるんだなと思った。被害者の恐怖とそれを上回るであろう苦痛は想像を絶するし、そのほとんどが女性であることにあらためて心が痛んだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2024年4月30日
読了日 : 2024年4月13日
本棚登録日 : 2024年3月29日

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