あゝ、荒野 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2009年2月25日発売)
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感想 : 40
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 詩人、劇作家、映画監督、写真家等、マルチに活動し47歳で逝去された寺山修司さん。
 本書は1966年に刊行された著者唯一の長編小説です。ボクシングに関わる2人の若者と、周辺の人間模様が描かれ、中心に2人の絆、友情、成長、そして逃れられない宿命を置いた物語です。

 寺山修司さんといえば、1968年から連載が始まった『あしたのジョー』の主題歌の作詞を手掛け、ジョーのライバル・力石徹が死亡した際に、実際に喪主として葬儀を執り行い、弔辞を述べるという、今では信じ難い逸話もあります。
 『あしたのジョー』がもつ若者の孤独、友情、挫折、再生といった普遍的なテーマが、何となく寺山修司さんの生き方と重なる気がします。

 1960年代、新宿の猥雑な雰囲気とネオンを荒野に喩え、プロットも作成せずに即興描写による実験的手法作品とのこと。

 全15話の冒頭に巻頭歌(?)が添えられ、ふんだんに名言・詩・流行歌等の引用がありますが、直接物語との関係性は? とやや困惑し‥。個人的には、その既成概念を壊すような挑発、退廃的な性、薄暗い新宿の土着文化が多い描写になかなか入り込めませんでした。泥くさいのはいいのですが‥。

 寺山さんの遊び心が散りばめられ、時代と著者の考証には欠かせない作品には違いないと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月17日
読了日 : 2023年10月17日
本棚登録日 : 2023年10月17日

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