主人公・秀一は高校生。10年前に母と再婚・即離婚するも、突然現れ居座る曾根。この男は、酒と競輪に溺れ、母と妹にまで食指を伸ばそうとする屑男でした。秀一は静かに激怒し、早い段階で殺ってしまおうと『強制終了』を決意します。
表題の『青の炎』の〝青〟が印象的です。実際の燃焼温度差は 「赤」<「青」、しかし色相の印象温度差は 「赤」>「青」と真逆です。
秀一の心に燃え広がった憎悪の炎は、刹那的・爆発的な真っ赤な炎ではなく、熟慮に裏付けられた、静かでより高熱を発して燃える青い炎でした。さらに、青春の〝青〟と湘南の海の〝青〟のイメージが鮮やかに重なります。
倒叙ミステリーっていうんですか、秀一の計画から実行、その後に至る内面・心情が、切ない程詳細にかつ濃密に描かれ、痛いくらいに読み手に伝わってきます。構成も素晴らしいですね。
17歳という無邪気さ、無謀さと危うさ、そして未熟さと愚かさと相反する巧緻性と実行力が秀一の中に混在しています。
家族を守るための完全犯罪の破綻、簡単に消えない青い炎の支配、これらを通して闇に取込まれていく過程が見事に描かれています。もはや、ミステリーを超越した優れた人間ドラマになっています。
この秀一が最後に選んだ道は‥? 余りにも尾を引く結末に茫然とし、暫し何も手につきませんでした。刊行から20年以上の時を経て、全く古さを感じさせない記憶に残る素晴らしい一冊でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年6月15日
- 読了日 : 2023年6月15日
- 本棚登録日 : 2023年6月15日
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コメント 10件
あゆみりんさんのコメント
2023/06/15
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/06/15
あゆみりんさんのコメント
2023/06/15
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/06/15
あゆみりんさんのコメント
2023/06/15
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/06/15
kuma0504さんのコメント
2023/06/16
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/06/16
なんなんさんのコメント
2023/06/21
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/06/21