『〝クジラ〟強調月間始めました!』
寒くなってきたのに、冷やし中華の宣伝みたいなタイトルを付けてしまいました。
普段、脈略のない読書をしていますが、ふと、クジラが何かの象徴や由来になっている物語が結構多く、でも未読のものが…と思い立ち、独断の標記企画と相成りました。
直前に読了した吉田篤弘さんの『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』は、<鯨塚>の町を舞台にした物語で、更に続篇『鯨オーケストラ』の発売が予定されています。タイトルに「クジラ」はないのですが、実はこの読書体験が触発された最大要因です。
また、読了済みですが、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』も名作でした。
これら以外の作品読了を目指し、これから思いつくままにシリーズとして進めていきます。
さて第1回は、辻村深月さんの『凍りのくじら』です。すみません、未読でした。
2005年・辻村さん25歳の作品で、等身大の主人公・理帆子の高校時代が、実に瑞々しく描かれています。辻村さんの好きなもの、苦しいことを全部詰め込んだ感があり、年齢を考えても〝すごい〟の一言です。
どこか達観していて、表面上は周りに合わせ、心ここに在らずで孤独な理帆子は、万人受けはしないでしょう。それでも、詳細で揺れる心理描写の秀逸さにより、批判・反感から共感へと感情移入していく気がします。
かつての自分を、孤独で助かることのない「白く凍った海の中に沈んでいくくじら」と重ね、自分ももらった海の底・宇宙を照らす光を、誰かに届けたいという、希望の物語と解釈しました。
- 感想投稿日 : 2022年10月25日
- 読了日 : 2022年10月25日
- 本棚登録日 : 2022年10月25日
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