私の中の朝井リョウさんは、エッセイの「腹と修羅」イメージが強すぎて、(失礼ながら)笑ってしまいます。真剣さの陰にある滑稽さ‥ぷぷぷっ‥。
本作は、大学生たちの就活を扱った物語です。就活を通して、人の本性を炙り出すような作品だと思いました。
個人的には某採用試験のみで、数多の入社試験の受験経験がないので就活の実体験が乏しいです。それでも、人生の中で一時的なものだとしても、当事者にとっては今も昔も十分過ぎるほど思い惑わされる一大イベントに他なりませんね。
「自分を飾る、誇張、打算、演技」から、「落ちる、拒絶?、自信喪失、人間不信、諦念」につながる心理描写は、読み手の心理までも見透かされているようで、恐ろしささえ覚えます。
また、SNSの危うさを巧みに織り交ぜながら、日頃私たち人間が使う「言葉」について、その重みを考えさせられました。
痛くてカッコ悪くても、何者にもなれなくても、それを自分で認めてそこから出発すること‥、浅井さんは全てを俯瞰し、かつ軽やかにSNSを使いこなす若者へも、愛あるメッセージを発してくれている気がしました。
人の多面性・裏側の恐ろしさと明日への希望を両立させた、秀作だと実感しました。ある意味、本作も「真剣さの陰にある滑稽さ」の原点なのでしょうか?
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年5月5日
- 読了日 : 2023年5月5日
- 本棚登録日 : 2023年5月5日
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