瀬尾まいこさんのデビュー作、未読でした。2つの短編が収められています。
表題作『卵の緒』は、捨て子疑惑を抱く小学生男児とその母親の絆を描いた心温まる物語です。
深刻な話‥ではなく、母親は実にオープンで心から息子を愛し、息子も素直で優しい子です。「親子の証」って何? の答えを軽やかに示してくれています。何か、『そして、バトンは渡された』に通じるものがあるなと思いました。瀬尾さんは、ちょっと複雑な家族関係を、重くならずに優しく少し切なく描くのが元々上手だったんだなぁ、と実感しました。
もう一編は『7’s blood』。こちらは腹違いの姉(七子・高校生)と弟(七生・小学生)の絆を描いた物語で、少し血が繋がっています。
設定の違いはあれども、2篇とも家族とは、愛情や人の繋がりとは何か、を考えさせられます。
瀬尾さんのあとがきの一文がとても印象的です。
「そこら中にいろんな関係が転がっていて、誰かと繋がる機会が度々ある。それは幸せなことだ。」
この考え方が瀬尾さんの原点にあるのだなと、妙に納得してしまいました。
瀬尾まいこさん特有の優しさや温かさ、人との関わりを大切にしたくなる物語は、今後も読み手である私たちの心を、明るく照らし導いてくれる気がします。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年4月29日
- 読了日 : 2023年4月29日
- 本棚登録日 : 2023年4月29日
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