墨のゆらめき

著者 :
  • 新潮社 (2023年5月31日発売)
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本棚登録 : 3343
感想 : 364
5

 実に面白く、魅力的な〝相棒〟物語でした。

 ホテルマンの続力(つづき ちから)と、ホテルが登録している筆耕士(書家)の遠田薫。続は実直で丁寧な仕事ぶり、反面、遠田は自由奔放、能天気、無神経と、対照的な2人です。
 この遠田がなんとも魅力的です。依頼した宛名書きの仕事は完成度が高く、その書は力強く端整で非の打ち所がありません。それに、ヤクザと見紛う迫力のある絶縁状から小学生の鉛筆文字まで、筆致を自在に変え、本人に憑依したかのように書き分けるのでした。ただ、人物は謎めいて過去は不明です。

 そんな遠田と奇妙なコンビを組むことになった続ですが、特に前半の2人の軽妙な掛け合いが楽しく、笑ってしまいます。それでも、遠田の書に次第に惹かれていき、徐々に打ち解けていく2人の関係性の変化の描写が絶妙です。

 刑事などのバディもの、水墨画や手紙の代筆を扱った小説も一定数ありますが、それらと一線を画す、バディ関係の妙を示す物語であり、書の魅力を最大限に伝える物語になっています。これらの魅力を伝える三浦しをんさんの文章の上手さ・言葉の豊かさが光っていると言えるでしょう。

 物語の終盤に、ある過去を明かした遠田でしたが‥、2人の関係の結末は如何に! これは読んでのお楽しみです。
 本書のページの行間、文字の隙間から、書のもつ迫力がゆらめくように立ち上がる‥、そんな描写が圧巻という他ない傑作でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月7日
読了日 : 2023年9月7日
本棚登録日 : 2023年9月7日

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コメント 5件

みんみんさんのコメント
2023/09/07

おはようございます♪
この作品すごく読みたいんですよね!
ただ予約数が…(꒪⌓︎꒪)

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/09/07

相棒ですが、BLの気はありません(^^)

みんみんさんのコメント
2023/09/07

しをんさんは腐女子ですけどね笑

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/09/07

 続編があるとすれば、しをんさんの好む方向へ舵を切ることもありかなぁ‥。それを、一歩間違えば(?)と取るか、待ってました! と取るかは自由であり、妄想の楽しさですね^_^

みんみんさんのコメント
2023/09/07

「まほろば…」くらいの距離感が良いですね♪

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