実に面白く、魅力的な〝相棒〟物語でした。
ホテルマンの続力(つづき ちから)と、ホテルが登録している筆耕士(書家)の遠田薫。続は実直で丁寧な仕事ぶり、反面、遠田は自由奔放、能天気、無神経と、対照的な2人です。
この遠田がなんとも魅力的です。依頼した宛名書きの仕事は完成度が高く、その書は力強く端整で非の打ち所がありません。それに、ヤクザと見紛う迫力のある絶縁状から小学生の鉛筆文字まで、筆致を自在に変え、本人に憑依したかのように書き分けるのでした。ただ、人物は謎めいて過去は不明です。
そんな遠田と奇妙なコンビを組むことになった続ですが、特に前半の2人の軽妙な掛け合いが楽しく、笑ってしまいます。それでも、遠田の書に次第に惹かれていき、徐々に打ち解けていく2人の関係性の変化の描写が絶妙です。
刑事などのバディもの、水墨画や手紙の代筆を扱った小説も一定数ありますが、それらと一線を画す、バディ関係の妙を示す物語であり、書の魅力を最大限に伝える物語になっています。これらの魅力を伝える三浦しをんさんの文章の上手さ・言葉の豊かさが光っていると言えるでしょう。
物語の終盤に、ある過去を明かした遠田でしたが‥、2人の関係の結末は如何に! これは読んでのお楽しみです。
本書のページの行間、文字の隙間から、書のもつ迫力がゆらめくように立ち上がる‥、そんな描写が圧巻という他ない傑作でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年9月7日
- 読了日 : 2023年9月7日
- 本棚登録日 : 2023年9月7日
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コメント 5件
みんみんさんのコメント
2023/09/07
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/09/07
みんみんさんのコメント
2023/09/07
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/09/07
みんみんさんのコメント
2023/09/07