久々の重松清さん。あ〜、この胸の奥がジーンと熱くなる感覚、やっぱり重松さんだなぁと改めて思います。
んで、本書です。結婚3年目、1歳半の娘を残し30歳で病死した妻の亡き後、必死に生きる「僕」と「娘」の10年間の物語です。
娘にも見せたことのない、密かな人生ノートをめくるかのように、健一(僕)の視点で綴られています。
健一自身、とても周囲の人を気遣う優しい人柄で、殻に閉じこもらずに、会社の同僚、義理父母、妻の兄夫婦との関係を取り持ちながら、少しずつ父娘2人は成長していきます。人には様々な立場があるわけですが、これらの人間関係と距離感が絶妙なので、物語に深みがある気がします。
唯一、健一の実の両親が描かれず、話を広げすぎて焦点化に支障をきたすのかな、と勝手な想像をしてしまいました。
それでも、娘の小学校卒業、健一の再婚までを一区切りとした「成長と再生の物語」は、軽やかな未来の予感を漂わせ、温かな余韻を引きます。
重松さんは、人の優しさ、思いやり、喪失感、葛藤等の描写が上手ですし、困難を乗り越える、折り合いを付ける落とし所もツボを得ていると感心します。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年12月3日
- 読了日 : 2022年12月3日
- 本棚登録日 : 2022年12月3日
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