ステップ (中公文庫 し 39-2)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年3月23日発売)
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本棚登録 : 3828
感想 : 304
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 久々の重松清さん。あ〜、この胸の奥がジーンと熱くなる感覚、やっぱり重松さんだなぁと改めて思います。
 んで、本書です。結婚3年目、1歳半の娘を残し30歳で病死した妻の亡き後、必死に生きる「僕」と「娘」の10年間の物語です。
 娘にも見せたことのない、密かな人生ノートをめくるかのように、健一(僕)の視点で綴られています。
 健一自身、とても周囲の人を気遣う優しい人柄で、殻に閉じこもらずに、会社の同僚、義理父母、妻の兄夫婦との関係を取り持ちながら、少しずつ父娘2人は成長していきます。人には様々な立場があるわけですが、これらの人間関係と距離感が絶妙なので、物語に深みがある気がします。
 唯一、健一の実の両親が描かれず、話を広げすぎて焦点化に支障をきたすのかな、と勝手な想像をしてしまいました。
 それでも、娘の小学校卒業、健一の再婚までを一区切りとした「成長と再生の物語」は、軽やかな未来の予感を漂わせ、温かな余韻を引きます。
 重松さんは、人の優しさ、思いやり、喪失感、葛藤等の描写が上手ですし、困難を乗り越える、折り合いを付ける落とし所もツボを得ていると感心します。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月3日
読了日 : 2022年12月3日
本棚登録日 : 2022年12月3日

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