月村了衛さん初読みでしたが、とても面白く読み応えがあり、物語にのめり込んでしまいました。月村さんの他作品に興味をもち、読書の幅が広がる体験ができました。
物語は2部構成。1部が、女性を騙し、金のために風俗へ転落させるホストクラブの話。2部はガラリと変わり、利益追求のためには何の犠牲も厭わない大手広告代理店の話です。
主人公は翔太と海斗。この2人の出会いと別れ、そして最後の最後に再会する物語でもあります。
章立てタイトルである「翔太の罪」「海斗の罰」のネーミングが本作の内容の的を射ており、不条理さや罪と罰の奥深さを感じます。
2部の共通点は、人をモノとみなす所業、人間の邪悪さでしょう。半グレや大手企業の裏ドキュメンタリーを観ているくらいにディティールがリアルで、現代社会の闇を描き切っています。実際の事件報道と重ねてしまうほど引き込まれます。
主人公を2人置いたプロットも見事で、全くタイプの違う翔太と海斗の対比、金の亡者と厳しい境遇の者の対比と扱いの筆致が素晴らしく、絶妙です。
日常のすぐ隣にある闇に足元をすくわれる怖さ、やるせなさが湧き出てきますし、読んでいてずーっと気分が悪いのですが、決して目を背けられない、という感じです。
世の中に蔓延る胸糞悪くなる個人や社会構造を炙り出し、著者の怒りと鉄槌が表れた渾身作であり、社会派小説の傑作と受け止めました。
翔太と沙希(=有紀)を救い、繋いだ「本」の存在と扱いが印象的でした。確かに本を読むことで、何かが変わったり救われたりします。(目的不要で)「ただ楽しいから読む」というくだりに、読書は万人のためのものだと、共感しかありませんでした。
- 感想投稿日 : 2024年2月24日
- 読了日 : 2024年2月24日
- 本棚登録日 : 2024年2月24日
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