情報生産技術及び大学教育スキルが詰まった良書。女性学、当事者研究、構築主義やフーコーの言説等、社会学の入門書としても秀逸で、上野先生上野ゼミ出身者の研究書・論文のアドバルーンにもなっており、上野先生が書き手として、そして教育者として世に文章や学生を送り出した後の責任も自覚しながら執筆されていることが伝わってくる。紹介されるジェンダー研究や当事者研究を本格的に読んで学びたくなる。『論文の教室』の書籍案内からたどり着いたが、論文執筆スキルとして研究方法データ集積・分析(調査)方法やコメント方法が特に専門的。
ジェンダーについてちゃんとした専門書を読んだことがなかったため、なぜLGBTQと性を多様としながら、『女性学』なるものがあるのか不思議だった。しかし本書を読んで「女性」を自認する女性たちの当事者研究だったのか!と目から鱗。上野先生が社会学雑誌への投稿ではなく自ら雑誌を創刊して論文投稿した話を含め、「女性学」から出た問題提起や作り出された概念(+それにより生み出された現象)が現代のジェンダー意識として常識化=公共財化していることの意味を痛感。脱構築やジェンダーという切り口の面白さを実感することができる。上野先生のゼミ生になりたくなること間違いなし。本書の正統読者は大学に所属する論文執筆者だが、50歳以上の生涯学習大学でのゼミのエピソードが含まれていることからも、本書は情報生産したい、あるいは生産者から消費者に情報を届けたい、全ての意欲ある読者が満足する内容だと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
論文
- 感想投稿日 : 2022年2月6日
- 読了日 : 2022年2月5日
- 本棚登録日 : 2022年2月5日
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