世界史としての日本史 (小学館新書 は 9-1)

  • 小学館 (2016年8月1日発売)
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歴史作家の半藤一利氏と立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏の対談である。この二人の対談なのだから内容が濃いのはもちろんだが、改めてこの二人の教養の高さを感じた。

最近は自分が信じたいことが書いてあるものしか読まないという人が増えています。そして日本では中国はこんなにもひどいという本はたくさん出版されています。でも中国には「日本はこんなにひどい国だが中国はこんなにも素晴らしい」という内容の本はほとんど見当たらないようです。中国にとってもはや日本など眼中にないのです。

この二人が共通して危機感を持っているのは日本人の知性の劣化です。OECD諸国の大学進学率の平均は62%で日本は50%で最低レベル。教育予算のgdp比率もOECD諸国で最低です。しかも日本の大学では学生がほとんど勉強していない。

戦後日本が経済大国となったのは、冷戦時代で日本はアメリカにとっての不沈空母であり、アメリカに追いつけというキャッチアップモデルがあり、人口ボーナスなのですから何も考えずひたすらがむしゃらに働けば8%程の経済成長を実現できました。そしてその頃は、あまり考えるより黙って働くことの方が重要でした。多くの人にとって教養は邪魔でしかなかった。だから日本人は勉強することはしないで、ただひたすら長時間働いた。

明治時代の岩倉使節団は、国ができたばかりのときに、政府の半分くらいの大幹部が1年半もかけて出かけているので、ものすごい英断だった。その人たちは、日本がどれだけ遅れてしまったかということをつぶさに学び、「日本は富国強兵」をして西欧諸国と肩を並べる力を身につけなければ日本は植民地化されてしまうという危機感で国を引っ張る。

戦前の日本人は、日本は遅れているという危機感を持って、世界に伍したいい国にしようと思って、一生懸命に勉強した。
今の日本人は、「日本は素晴らしい国で、中国や韓国はひどい国だ」と決めつけながら、自分の意見と合う情報しか獲ようとしない。

若い人でこの2人のように、しっかり勉強している人が増えなければ、日本の将来は危うい。私は65歳の年寄りだが、日本人の一人としてしっかり勉強しなければと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年11月17日
読了日 : 2020年11月16日
本棚登録日 : 2020年11月16日

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