生きて帰ってきたある日本兵の戦前戦後史。
センチメンタルに、あるいは大仰に語られがちな戦前戦後史を、ある1人の生涯を軸に語っている。
そのため、月並みな感想だが、この本を読むことで戦前戦後史に対して違った見方を得ることができる。或いは、歴史に対して違った見方を得ることができる。
その時の人が、どう感じ、どう生きたかは、いわゆる歴史書では知ることができない。当時世間を賑わせた出来事であっても、その時代に生きた一部の、或いは多くの人にとってはどうでも良いことだったのかもしれない。そのような実感を考えることなく、歴史を語ることは非常に浅いことなのかもしれないと感じる。何故なら、歴史を作ってきたのは、他ならぬその時代に生きた人々だからである。
他の本で、著者は、戦争責任に対して、誰もが被害者であり加害者でもある、というより、それすら整理できないのが戦争なのである。という趣旨のことを述べている。おそらく、著者のこの考えは、この本と通ずるところもある。なぜならば、この本の語り手である謙二も、戦争の加担者でありながらも、その責任がどうであるとか、考える暇もなく、時代の流れに巻き込まれていたからである。
なんとなく、「この世界の片隅に」に通じる気がする。
読み物としても興味深いし、誰でもない1人の目線をもとに歴史を描き出すという試みの本という目線から見ても、非常に良い本。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年1月3日
- 読了日 : 2020年1月3日
- 本棚登録日 : 2020年1月3日
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