明恵 夢を生きる (講談社+α文庫)

著者 :
  • 講談社 (1995年10月17日発売)
3.82
  • (38)
  • (29)
  • (56)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 544
感想 : 34
4

さて、明恵。学ぶほどに好ましく、そこに感じるのは全く違う存在への憧れ、というものではなく、日常の自分は妥協してしまっているが本来ならこうありたい姿、というものをそこに見出す。
ストイックさ、潔癖さ、合理性、自己への客観視などなど、、、「そういう考えもあるのか」ということではなく、「ちゃんとそこまで徹底して実践できた人があるのか」という驚きになる。
だから、あまりに徹底した他力本願のありように、そんな考え方もあるのか、、、と感動した親鸞や、どこから共感していいのかわからないほど膨大な道元、天才過ぎてついていけない空海。そういったものとは違う。
「釈迦」に憧れ、自制し、自惚れず、死を側においておける。そういうのは、「こうありたいけど、そこまではやり過ぎかな」とか、「ちょっとキツいよね」みたいな安易さで妥協しているが、自分のなかに守れていない教義としてあるものである。
なので、ひたすら、自省への道を発見させられる。
畏敬の念はあるが、親しみを感じずにはいられないものもある。

あるべきようは。
これは問いかけなのだ。
在るべき様は、どういうものだ?と。それを考え、実践するのだ。
How should I be ?
ということか。

本書は、明恵の夢を、夢記を通してユング心理学者の河合隼雄氏が夢分析していく。
何せ遠い800年も昔のことを夢分析するので、過剰な分析をしていないあたりが良心的。
また、そのなかでも、夢の変遷と、時代背景や明恵の伝記をあわせみることで、明恵の個性化を見出していくとともに、そういったことにある程度自覚的ですらあった明恵に驚いていく。
取り敢えずまずは僕も夢記をしてみようと思う。

「我、戒を護る中より来たる」そんな最期の言葉を言えるほど堂々と生きるべきなのだ。それが、あるべきようは、を問い続け、実践していくことなのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月18日
読了日 : 2018年9月16日
本棚登録日 : 2018年11月18日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする