ボードレール 他五篇: ベンヤミンの仕事 2 (岩波文庫 赤 463-2 ベンヤミンの仕事 2)
- 岩波書店 (1994年3月16日発売)
収録されている「複製技術時代の芸術」を読みたくて購読。
複製技術時代の芸術作品からは、作品の一回性が消失する。芸術作品は、コピー機でコピー可能になる。
複製技術時代では、芸術作品の宗教的、礼拝的価値が消失する。かわりに芸術作品は、社会的、展示的価値を帯びる。教会や礼拝堂にあった芸術作品は、美術館におかれるようになる。
かつて芸術作品は、鑑賞者に精神の集中を要求したが、複製技術時代の芸術作品は、鑑賞者に遊戯を与える。「少数の為の芸術」から「大衆の為の芸術」になる。ヨーロッパ映画からハリウッド映画へ。娯楽性の増大。
複製技術時代の映画は、ファシズムと結びつく可能性を持つ。ファシズムは、権力者による大衆支配の関係を固定しようとする。ファシズムはまた、政治を耽美化する。政治が芸術的になるし、芸術は政治に奉仕するものになる。ファシズムのプロパガンダ映画を見た大衆は、美しい権力者を賛美し、権力者が罵倒する対象を嫌悪するようになる。
ファシズムと対立するコミュニズムは、芸術を政治化する。
芸術作品によってコントロールされるのでなく、芸術作品によってコントロールを打ち破ること。ベンヤミンは、複製技術時代の芸術作品が、コントロールの道具になるのでなく、コントロールを打ち破る抵抗の契機になることを望んでいる。
・・・などとまとめてみたけれど、『複製技術時代の芸術作品』は、こんなふうにまとめきれる作品ではない。要約されることを拒否するように、ある一つの話の結論が出そうになったら、全然関係ない話に移って、そこで結論が出そうになったら、また違う問題提起がされて、もうわけわからん論文。だからこそ美しいベンヤミン。
ベンヤミンは断片を愛した。決して要約できないものにアウラと美が宿る。
- 感想投稿日 : 2010年8月25日
- 読了日 : 2010年8月24日
- 本棚登録日 : 2010年8月24日
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