贈られた手―家族狩り〈第3部〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2004年3月28日発売)
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感想 : 108
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またひとつ無理心中に見える一家惨殺事件が起こる。そしてその周りには 浚介がおり 馬見原がおり 亜衣もいる。
あることから逃げ出さずに立ち向かおうとすると もう一方のあることが壊れそうになる。今、たった今この時に 本当に考えなければならないことは何なのか? 手を伸ばせば届く身の回りのことなのか、それとも雲を掴むような遠い所のことなのか。両方を一度に胸に抱くことは不可能なことなのか。

浚介は、教師になりたての頃 たった半年教えたことのある元生徒と出会うことで 闇の中にひとすじの光を見た心地なのではないだろうか。僅かでも明日につながる何かを感じられることが これほどほっとさせるものだと 改めて感慨深い。
救いのない沼の底にいながら 第一部・第二部とは ほんの少しだけ光の色が違っている第三部だと思う。第四部では もっと明るく温かい色味を感じられることを願う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: た行の作家
感想投稿日 : 2004年11月27日
読了日 : 2004年11月27日
本棚登録日 : 2004年11月27日

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