恥ずかしながら著者やこの作品に関する予備知識を何も持たずに読み始めたのだが、これはまんまとしてやられた。
確かに序盤からいくつか「あれ?」と思わせるヒントは散りばめられていたように感じるが、それでもこれはクローズドなシーンに特化した変わったファンタジーなのかな…と思い込んで読んでいたから、中盤で作中世界の構造が明かされた時には素直に驚いてしまった。
そして主人公を取り巻く環境とともに作品が醸し出す波長も一気に様相を変え、ラストは見事な幻想小説として幕を下ろしており、なるほど、巻末解説を皆川博子氏が請け、著者に賛辞を送っているのも当然だ、と腑に落ちた。
目に見えるものの醜悪さ、見えないものの美しさ。
感じた価値はいとも簡単に対極に転じ得る。
すべては観察者たる私たち次第なのだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文庫
- 感想投稿日 : 2017年4月1日
- 読了日 : 2017年4月1日
- 本棚登録日 : 2017年4月1日
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