捜査 (ハヤカワ文庫 SF 306)

  • 早川書房 (1978年8月1日発売)
3.59
  • (7)
  • (5)
  • (13)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 95
感想 : 11
4

十何年か前に『ソラリスの陽のもとに』に続けて読んだ、
それよりも少し古いレム作品を再読。
ロンドンで霊安室の遺体が姿勢を変えたり、
消失したりする怪事件が続発。
スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)では
シェパード主任警部を中心に捜査会議が開かれたが、
グレゴリイ警部補他、一同は状況の奇怪さに当惑する……。

死体の移動について、ある可能性に思い至りながら、
現実味の薄さに却下せざるを得なかったり、
捜査協力者の中に裏で事件の糸を引いていそうな人物がいると目をつけ、
その人を尾行したりするグレゴリイだったが、謎は深まるばかり。
探偵役が「正解」に辿り着けず、
真実の究明を放棄してしまう風な態度を取るところは、
モーリス・ポンス『マドモワゼルB(べー)』や
ロブ・グリエ『消しゴム』に似た雰囲気。
本作の主人公グレゴリイ警部補は、
超現実的な解釈を採用すれば一応の辻褄は合うけれども、それを選択すると、
日常生活の中で普通に起こり得ることとそうではないことの境界線が
曖昧になってしまって恐ろしい……と、危惧して尻込みするかのよう。
思い切って一線を越えて超合理的解決を図ろうとしない彼は、
平凡で常識的で安全な生活を続けられる代わりに、
スリリングな体験も飛躍的な出世もせず、ウハウハなモテ期を迎えもせず、
自分より冴えないオッサンが
積極的に女の子に声をかける様子を見て「なんだかなぁ」と首を傾げては、
間借りする冷え冷えとした屋敷の一室に戻る暮らしを
続けていくのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  東欧文学
感想投稿日 : 2018年1月1日
読了日 : 2018年1月1日
本棚登録日 : 2017年12月13日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする