昨年読んだ「奇妙な味」アンソロジー『夜の夢見の川』
https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4488555055
が、面白かったので、
順序が逆になったが、先に出ていたこの本も購入、読了。
英米の何だかちょっと変な短編集、全18編。
但し、カバー画の雰囲気に釣られて手を出すと
期待外れに終わる可能性大――と、申し上げておきましょう。
あんな雰囲気の兄さんは登場しない(笑)。
以下、特に印象的な作品について。
■ジョン・アンソニー・ウェスト「肥満翼賛クラブ」
原題は「Gladys's Gregory」=「グラディスのグレゴリー」。
ある町の伝統的なイベントに参加する夫婦たちの
涙ぐましい奮闘に、黒い笑いが込み上げる。
詳述を憚られるお下劣奇談。
これを読んで眉をひそめる読者もいれば
ケラケラ笑う読者もいると思うが、
私は後者の皆さんの仲間(笑)。
ともあれ、素晴らしい超・意訳邦題に拍手!
■ロナルド・ダンカン「姉の夫」
原題は「consanguinity」
=「血族」あるいは「密接な結び付き」。
第二次世界大戦中のイギリス。
休暇を得て帰省する列車で
同じコンパートメントに座った大尉と少佐。
大尉は少佐を自宅に招き、姉に引き合わせる。
弟のサポートにのみ喜びを見出してきた姉は
初めて外部から訪れた男性に好感を抱き、
少佐と結婚。
しかし、弟も同行する新婚旅行の途中で……。
英国怪奇小説の伝統に則った朦朧法による怪異譚。
■ケイト・ウィルヘルム「遭遇」
妻と口論して先にスキー場から引き揚げた
保険外交員ランドルフ・クレインは、
大雪のためバスターミナルで足止めを食う。
待合室で寒さに震えながら、
たまたま居合わせた女性と共に
暖房器具を調節しようと試みたが……。
主人公の暗黒面が徐々に暴かれていく展開だが、
ラストの解釈が難しい。
一理ありげな意見をネット上で発見したが、
それは編者の言う「SF的な解釈」には
相当しそうにないので、悩みは深まる。
しかし、そこが何とも面白い。
■ネルスン・ボンド「街角の書店」
煮詰まった小説家が、
心臓発作で亡くなった詩人が訪れていた街角の書店へ
向かうと、
そこには様々な有名作家の未発表作と共に、
詩人が刊行するつもりで果たせなかった詩集が並び、
しかも……。
オチはありきたりだが、
創作に携わる者の苦悩と願望と惑乱が、
切なく、悲しい。
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- 感想投稿日 : 2018年9月26日
- 読了日 : 2018年9月26日
- 本棚登録日 : 2018年9月5日
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