三浦しをんさんが描く男同士のバディものはやはり良いなと思う。
多田便利軒シリーズ、仏果を得ず、政と源などに続く魅力的な二人だ。正確に書けば、女性が好む男性同士の友情の形なのだろうが。
マイペースでズケズケと言いたいことを言うのに、気遣いもあってどこかミステリアスな書家・遠田薫(とおだかおる)。
話しかけられやすい体質で平凡な家庭に生まれ育った競馬と読書好きのホテルマン・続力(つづきちから)。
二人を結びつけたのは、続が勤める〈三日月ホテル〉の筆耕(招待状などの宛名書き)依頼。
遠田は書家として、書道教室の先生として、また筆耕の仕事を受けて、の他に先代からの仕事で手紙の代筆業もやっているらしい。
小学五年生の三木遥人くんから転校していく友人への手紙の代筆を手伝ったことをきっかけに、続は遠田の家を度々訪ね親しくなっていく。
猫のカネコ氏(何故カネコという名前なのかは読まれてのお楽しみ)、続の競馬仲間・原岡、小学生の遥人、亡くなった遠田の養父・康春氏にその妻、遠田が一時世話になった中村など、脇役にも魅力的な人たちがたくさん出てきた。
終盤は遠田の過去の話があり、その辺りも多田便利軒シリーズっぽい感じでちょっと切なかったが、最後はホッとした。
全く違う半生や環境だったからこそ気の合う二人になったと思えるし、互いを補いあったり助け合ったり、時に喧嘩もしたりといい関係が続きそうだと思える。
出来ればもっとこの二人の話を読みたかったし、どんな代筆をするのかももっと読みたかった。
書の世界は私には敷居が高いもの(何しろ悪筆で困っている)だが、続の目から見る書は私同様初心者目線でありながら新鮮だった。
遠田の書も見てみたい気がした。
- 感想投稿日 : 2023年10月21日
- 読了日 : 2023年10月21日
- 本棚登録日 : 2023年10月21日
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