決定版 鬼平犯科帳 (3) (文春文庫) (文春文庫 い 4-103)

著者 :
  • 文藝春秋 (2016年12月31日発売)
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4

鬼平シリーズ第三作。

今回は火盗改方を解任となった平蔵が、父の墓参のために京へ行くの巻。
とはいえ、のんびりした旅になることはなく、行く先々で悪党に出会い、事件に遭遇し、時に命を狙われ危険な目に遭いながらも見事解決していく。

このシリーズでは平蔵は度々火盗改方を解任されているが、平蔵の失敗があったわけではなく、時には政治的思惑があったり、今回のように大きな事件がなく休暇代わりの解任というのもある。

先に書いたようにこの休暇を利用して、京にある父の墓参りに行くことにした平蔵がお供に選んだのは前回登場回数が多かった木村忠吾。
危なっかしい忠吾だが、なんだかんだで平蔵は気に入っているようだ。
だがせっかく平蔵にアピールする機会だというのに、忠吾はまたもや女性に現を抜かす。
しかもその女がなんと盗賊の一味で、平蔵若かりし頃にかかわり合いがあって…。

ここまで来ると、忠吾がどこまでだらしないのか、お間抜け振りを見せてくれるのか、期待すら感じて来た。
何しろ平蔵に釘を刺されても刺されてもフラフラと女の元へ向かって行くのだ。もうそういうモノだと諦めるしかない。
だが最後の最後で踏みとどまり、同心としての役目も何とか果たすのだから、悪運が良いというか、何と言うか。
それに今回の旅でかなり痛い目に遭ったので、少しは目が覚めたようだが、それもいつまで続くのか、それともこの旅を機に覚醒してくれるのか。

今作で印象的だったのは岸井左馬之助との友情。左馬之助の幼馴染が悪党として現れ、心配のあまりに追いかける左馬之助の影で、平蔵は忠吾と共に幼馴染が起こした事件と向き合う。
平蔵に心配を掛けまいと幼馴染のことを打ち明けない左馬之助と、左馬之助を傷付けまいと何も言わない平蔵。
二人の互いを思う気持ちが良い。

もう一つは平蔵の妻・久栄。
ドラマではキレイで平蔵を支えるよき妻という印象的しかないが、意外に肝が座りかつ冷静な判断が出来る、さすが火盗改方の妻という一面を見せてくれる。
『女は、男しだいにございます』
という通り、久栄は平蔵と出会い共に生きるうちにこのような新たな一面を身につけたのだろうが、平蔵もまた久栄がいるから心置きなくお役目に邁進出来るのではないか。
こうして見ると、やはりお似合いの夫婦だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説 捕物
感想投稿日 : 2020年5月13日
読了日 : 2020年5月13日
本棚登録日 : 2020年5月13日

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