野菜を中心にした〈菜の花食堂〉を営む傍ら定休日には料理教室も開いている下河辺靖子先生がタイトル通り「ささやかな事件」の謎解きをする第三作。
シリーズとしての変化は元生徒の香奈が押し掛け弟子として料理スタッフになり、食堂では瓶詰工房が完成して新たな目玉商品が出来ている。
主人公の優希は瓶詰商品の売り込みや新たな営業スタイルに向けての準備にこれまでにない充実感を感じて新たな決意をする。
事件は香奈の彼氏が料理を食べてくれない問題再び。
ピクルスのお酢だけを欲しがる女の子。
野菜の無人販売所で売り上げが増えている。
優希の隣人の謎の行動と臭い。
「ささやかな事件」だけに解決もあっさり。ちょっと強引さが感じなくもないが靖子先生の着眼点とそこから真相にたどり着く鋭さはさすが。
個人的には香奈の話は興味深かった。現代は食育と評して様々な物を食べさせる方向にあるが、それが良いことなのか何なのか、よく分からなくなった。早い段階で特性を見極めるという意味では良いのだろうが。
最終話では靖子先生の過去に触れる話が再び出てくる。店名に「菜の花」と付けているのに菜の花を食材として使わないのは何故か。
店内に菜の花の絵が飾られているのに目立つ場所ではなく隅にあるのは何故か。
靖子先生は語らないので触れられたくないのだろうが、優希は調べ始める。
優希のお節介かと思われたこの話だが、優希の新たな才能の発見とサプライズパーティーへ繋がる。それにしても靖子先生、周囲の人々には穏やかで優しいが自身のこととなると頑固。そして家族もまた…。だがその頑固さがあっての食堂であり開いた才能なのだろう。
二十五周年を迎えた〈菜の花食堂〉がどう変わるのか、優希や香奈がどう成長するのかも楽しみ。
- 感想投稿日 : 2022年5月29日
- 読了日 : 2022年5月29日
- 本棚登録日 : 2022年5月29日
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