父子ゆえ 摺師安次郎人情暦

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2018年1月11日発売)
3.60
  • (4)
  • (19)
  • (18)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 119
感想 : 13
3

摺師を主人公にした連作集。
錦絵絡みの様々な事件が起こり、摺師ならではの視点や摺りの技で解決していくのがなかなか新鮮。
錦絵に絵師の名前は出ても、摺師の名は表には出ない。
(厳密には彫師の名は出るそうだ)それでも職人らしく、決して手は抜かないし、絵師や版元の希望に応えるべく、最大限の工夫と技術を見せる。
馬連一つ持っての渡りの摺師がいることや、様々な摺りの技術など、興味深いことも色々分かってその点では面白かった。

また主人公の安次郎が早くに妻を亡くし、長らく義父母に預けていた息子を引き取るきっかけも彼らしいなと感じた。

ただ毎度『てぇへんだ!』と事件を持ち込む弟弟子や、タイミングよく現れる幼馴染の女性など、よくあるパターンだったりもする。
また安次郎を追い出し家を継いだ叔父との関係ももう少し深掘りして欲しかったし、長屋の店子たちや職場の仲間たちにも色々スポットを当てればもっと読み応えのある作品になったかもと思うと、惜しい気がする。
このシンプルさが梶さんらしいと言えばそうかも知れないが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代・歴史小説 絵師・絵
感想投稿日 : 2018年5月22日
読了日 : 2018年5月22日
本棚登録日 : 2018年5月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする